好きだったメーカーに触れ、新たな挑戦
「より良い環境があれば躊躇なく動こう」
を実践していましたら、
これで4つ目の職場となりました。
調律師になると決めて以来、
「身近なピアノを良くしたい」
というのが私の一番やりたいことで、
そのためには
より高いレベルに身を置いて、
そこで得た経験を
お客様のピアノに活かしたい
という思いが、ずっとありました。
そして、ありがたいことに
ずっと好きだったメーカーのピアノを
身近に感じられる環境が与えられました。
この会社では、
行く先は演奏会やレコーディングスタジオがメイン、
そこでお会いするのは
プロの演奏家さん、音楽家さん、スタッフさん。
今までとは全く違う、
そしてまさに自分が求めていた環境が
そこにありました。
現場へ行くと、いずれも前回調律は
比較的近い日程(前日のことも)であることが多く、
諸先輩方や、自分が調律して
それが弾かれたあとの状態を見れるということ、
また調律後に、
初めてお目にかかるピアニストさんや
スタッフさん方とお話しして、
ピアノのご確認、場合によっては手直し、
そしてOKをいただいて失礼する・・・ということが
とても刺激的で、
学ぶことばかりでした。
それと同時に、
周りの方からの目も
今までとは違う厳しさがあり、
現場でのピアニストさんとのやりとりもそうですが、
自分の後に調律に入られた先輩から
ご指摘をいただくこともありました。
これはとてもありがたく、
そのような話になったときには
店内のピアノで作業をして
見てもらってアドバイスをいただいたり、
そのまま食事に連れて行っていただいて
色々なお話を伺ったり、
そんなありがたい機会もありました。
とにかく、
今までと環境が違い過ぎて
聞く話すべてが夢、憧れの世界のことのようで、
それを現実として生きてこられているこの先輩方は
何てとんでもない方々なのだろう・・・と。
そして、
自分は、いつか本当に
その世界に割って入れるのだろうか・・・と、
いくらか複雑な思いもありつつ。
許される時間内で、
自分なりに真剣に技術と向き合っていきました。
自分の仕事を
テレビやスマートフォンから、
またCDになったものを聴いてみて、
「なぜこれはこうなったのだろう」
と振り返ってみたり、
先輩の仕事に同行させていただいて、
ホールのコンサートグランドの保守点検や、
また作業だけでなく
演奏会やレコーディングの現場での振る舞いを
学ばせていただくことができたのも
この環境ならではのこと、感謝しています。
そして、その中で痛烈に感じたこと。
「結局、個の力が弱ければ何の意味もない」
ということです。
私は、すばらしいチームの一員に
入れていただくことができました。
そのことで、素晴らしい肩書が手に入りました。
高いレベルが求められる現場にも
出入りできるようになりました。
でも、それと「三島は上手い」とは
まったくの別問題です。
どんなに
「私はあのチームにいるんですよ」
「私はあのピアノを日常的に触っているんですよ」
「私はこんな現場に出入りしているんですよ」
と言ってみたところで、
質が伴っていなければ
何の意味も持たなくなってしまいます。
もちろん、↑こんなことを鼻にかけて
人様にお話ししたりはしませんが、
結局は自分次第。
まずはもっと腕を磨きましょう ということを
はっきりと知ることができました。
この環境の中で技術に向き合えるのは
あまりにも幸せなことで、
過去に音大で過ごした日々のように
自分の自由にできる時間が
今は無限にあるわけではありませんが、
それがかえって時間の濃さ、密度を
上げてくれたように感じています。
何だか色々なことが
一見マイナスに見えそうなことすらも
実はプラスに働いてくれていて、
与えられた環境、
また周りの皆様に本当に感謝です。
そんな中で、新型コロナです。
3月は演奏会や発表会が軒並み無くなり、
4月はレコーディングも無くなり、
収入はかなり減りました。
おかげさまで、
収入源は分散させておかないと危険だ
ということが顕著になり、
私は会社との契約内容を変更。
5月1日より
個人としても活動できるようになりました。
essenceのスタートです。
大変ありがたいことに
嘱託契約は続けさせていただいておりますので、
今でもホールさんやレコーディングスタジオさんの
調律のご依頼をいただき、
現場へ足を運ばせていただいております。